ヤマビルなぜ増えた?森林の荒廃、シカやイノシシに関係があります。
ヤマビルとシカ、ヤマビルとイノシシの関係
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ヤマビルの吸血被害の増加はシカやイノシシにも関係があります
ここ数年、ヤマビルの吸血被害が増えている地域ではシカ類が増加し、シカの生息密度が高くなってきたと言われています。
例えば、秋田県の井川町、五城目町、群馬県の中之条町ではカモシカが、神奈川県の丹沢山系の清川村や兵庫県の朝来町ではニホンジカが生息範囲を広げています。
ヤマビルは動物の血液を摂取しなければ大きくなれず、卵を産むこともできずに死んでいきます。自然界の中でヤマビルがどのような野生動物の血を吸っているのかを血液のDNA鑑定によって調べますと、秋田県ではカモシカ、千葉県の房総半島ではニホンジカへの吸血が最も多いことがわかりました。ついでサル、ノウサギからも血液を摂取していました。
千葉県の房総半島のニホンジカでは、足に有穴腫瘤(ゆうけつしゅりゅう)といわれる穴をあけて、そこにヤマビルが入り込み、半寄生の状態(調査した157頭のうち63頭(40.1%)に寄生)で吸血していることが明らかになりました(浅田ら、1995)。この穴に入ることによりヤマビルは脱落せずにたっぷりと時間をかけて吸血できるうえ、遠くまで移動・分散ができるわけです。 このようにヤマビルは栄養と繁殖を主としてシカ類に依存しながら山の奥深くでひっそりと生きてきたのです。
写真:ハンターの方からの写真提供。ニホンジカ(オス)の有穴腫瘤(平成18年6月丹沢奥山にて捕獲)。ヤマビルによる度重なる吸血により皮膚に穴があいている。
シカの蹄(ひづめ)に有穴腫瘤(ゆうけつしゅりゅう)ができるまで
ヤマビルの吸血によりニホンジカの蹄(ひづめ)に有穴腫瘤(ゆうけつしゅりゅう)ができるまで
(1)ニホンジカを吸血中のヤマビル(2007.7.4丹沢・札掛)
(2)吸血されて出来た、ヤマビルの吸血痕
(3)吸血されることが多くなった場合
(4)繰り返し吸血されて出来た有穴腫瘤(ゆうけつしゅりゅう)
ヤマビルとイノシシ
ヤマビルの新しい吸血動物として登場してきたイノシシ
ヤマビルがこれまで吸血してきた主な動物はニホンジカ(千葉、神奈川、静岡など)やカモシカ(秋田)などでしたが(ヒトを吸血しているヒルは多くはありません)、2004年、兵庫県下のDNA分析によるヤマビル吸血動物調査でイノシシがヤマビルの新しい吸血動物として初めて登場しました。その後、2009年には神奈川県下の調査で同様にイノシシがヤマビルの吸血源となっていることが明らかとなりました。(図1・図2)
また、神奈川県秦野市の里山ではニホンジカとイノシシの両者を同時に吸血しているヤマビルも見つかっております。この秦野市の里山でセンサーカメラによって動物の出現状況を調べると、里山の同じ場所で出現する時間は異なりますが、写真のようにニホンジカとイノシシが集団で出現しているのが観察されております。
しかし、どうしてヤマビルはこのイノシシを吸血源とするようになったのでしょうか?
そこには日本の里山における自然環境の変化がありました。最近、地球温暖化の影響によってイノシシ、シカ、サルなどの大型哺乳類の生息数が増えています。特にイノシシ(注1)はこれまで西日本を中心として生息していましたが、最近は冬期に雪が少ないことから生息範囲が福井、石川、富山、新潟などの日本海側の地域に拡がり、山梨、千葉、神奈川などでも激増中で、それに伴ない、イノシシによる農作物への被害も深刻になりつつあります。
農林水産省によると、1994年全国の鳥獣による農作物被害額は196億円。このうちイノシシによるものが最も多く55億円にもなります。また、1993年度に駆除されたイノシシはおよそ7万6000頭で、その他狩猟でもおよそ14万頭が捕獲されています。
このようにイノシシの生息数の増加と分布地域の拡大はヤマビルの新たな吸血源となることで、その生息範囲を拡げるとともにヤマビルの運搬役となってヒトへの更なる吸血被害の拡大につながる要因のひとつになっています。
イノシシ
イノシシはもともとアフリカに誕生し、アフリカからヨーロッパ、アジア、日本へと移動してきました。このイノシシは最近、ヨーロッパでも問題となっており、ここ2、3年ドイツではベルリン市内に1万頭が生息し、住宅地にも進出。320パーセントもの勢いで増加しており、2009年には47000頭以上が捕獲されて大きな問題となっております。ポーランドでは10万頭が生息しており、そのうち8万頭が狩猟で捕獲されています。英国では16世紀に絶滅したと思われていましたが、最近になって数百頭は生息しているといわれています。 (平成21年2月11日ニッポン放送より)
ヤマビル研究会 (代表:谷 重和)
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