コモチカワツボが増えると、ホタルの生育に影響があるのではないかと危惧されています。
指名手配ファイル4番 コモチカワツボ
コモチカワツボの概要
英名:New Zealand mud snail/学名:Potamopyrgus antipodarum
特徴:ニュージーランド原産の殻長(殻の縦の長さ)4~5mmの繁殖力旺盛な淡水性の巻貝。マスやウナギなどの魚とともに移入されたのではないかと考えられています。日本国内では1990年に三重県桑名市で初めて見つかりました。
滋賀県では指定外来種
現在では日本各地の養殖場や比較的きれいな川などを中心に16県に拡大しています。環境省の指定外来生物には指定されていませんが、滋賀県では指定外来種として注意を促しています。
カワニナによく似ている
このコモチカワツボは2~3年前にテレビで紹介されていました。ゲンジボタルのエサであるカワニナ(学名 Semisulcospira libertina の稚貝によく似ているので、エサとして間違えてまかれた可能性があり、実際にホタルの生息しているところで、このコモチカワツボがよく見つかるとのことでした。
大きさはカワニナ20mm~30mm、コモチカワツボ4mm~5mmで、コモチカワツボは非常に小さい貝です。
(図参考:浦部美佐子/滋賀県立大学)
分布地で違うホタルの点滅
コモチカワツボが繁殖している地域では、ゲンジボタルが激減しているのではないかという疑いがもたれています。ゲンジボタルは日本では大型のホタルで、光量が強いことで知られ、日本の夏の風物詩として幻想的な光のシンフォニーを演出しています。オスはメスを求めて一斉に点滅を繰り返します(同時明滅性)。
面白いことに、ゲンジボタルの光の点滅が東日本では4秒に1回、西日本では2秒に1回と少し早く点滅します。さらには、東西の境界線近くの静岡・糸魚川日本大地溝帯では3秒に1回の割合で点滅するホタルが見つかっており、遺伝的な分化が生じています。
このことは、九州のゲンジボタルを人為的に東京や他県にもってくればホタルの遺伝子型の分布状態を撹乱させてしまう危険性があります。むやみに人為的に移動させない配慮が必要です。
ホタルの点滅とコモチカワツボの問題とは?
コモチカワツボを食べたゲンジボタルは点滅する光量が弱くなり、メスを誘うことができにくくなり、ホタルの成育にもよくないことがわかってきました。
東京都板橋区ホタル飼育施設においてゲンジボタルに本来のエサであるカワニナと問題となっているコモチカワツボを食べさせて両者を比べてみました。その結果、カワニナを食べたホタルでは30個体中23個体(76.6%)が羽化しましたが、コモチカワツボを食べたホタルでは30個体中7個体(23%)しか羽化せず、極めて少ない羽化率でした。また、ホタルの成育についてもカワニナを食べさせたものに比べてコモチカワツボの場合は発育が悪かったとし、また、カワニナを食べたホタルの光量が9ルクスに対し、コモチカワツボでは1ルクスと光量が大幅に低下していました。このように光量が弱くてはメスを誘えず、交尾ができにくくなる恐れがあります。
ほたる来い
古い唄の中では恋路を照らしたり、恋に身をこがしたりするホタル。わらべ歌の「ほたるこい」、唱歌「蛍の光」は誰もが一度は口ずさんだことがあることでしょう。その光が象徴的な生きものであることは昔から知られています。しかし、その光が弱くなり、夜空に舞うことなく消えてしまうようなことがあったら・・・
6月になればゲンジボタルが飛び交う季節がやってきます。皆さんの故郷ではどうなっているでしょうか?こんな問題点をふまえてホタルを見つけてください。ホタルにとっては受難の日々が続きますが、もし、川辺でコモチカワツボを見つけたら、少しでもこの貝を取り除いてくれることを望みます。
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