ユスリカの幼虫は水質改善に一役買ってます。
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ユスリカに関する基本事項
ユスリカとは、幼虫が水底で体をゆらゆらと揺すっている様子から「揺すり蚊」として名づけられたようです。
双翅目 ユスリカ科に属する。
幼虫は釣り餌のアカムシとして知られている。
成虫は蚊に似ているが吸血しない。
おおまかな生活史は、卵~幼虫~蛹~成虫の四期からなっています。
(1)ユスリカの卵はゼリー状の物質にくるまれています。ユスリカは水面や浮葉植物、浮遊物などに産卵し、1~3日ぐらいで孵化します。
(2)生まれたばかりの幼虫は湖底や河床に沈んでいきます。幼虫はヘモグロビンをもち、赤い色をしているのでアカムシともいわれています。幼虫は動物の死骸、腐敗物や有機物を食べながら、泥や粘液で繭(まゆ)のような巣を作ります。
(3)幼虫は蛹になるまでに4回~5回の脱皮をします。その後、羽化するために水面へと向かいます。
(4)成虫になってからの寿命はわずか3日~1週間です。羽化したオスの成虫は残されたわずかな期間に配偶者を求めて様々な手段を講じます。
害虫としてのユスリカを知るキーワードは「富栄養化」
富栄養化(ふえいようか)とは、湖、沼などの水域で窒素やリンなどの栄養塩類が増えることです。近年問題になっている富栄養化は、その原因が工業排水、生活廃水などの人為的なものであり、かつ急速に進んでいることが問題とされています。文字だけを見ると良いことのように感じますが、窒素やリンが増えると、植物性プランクトンが急速に増え、生態系がバランスを崩し、水は濁り、酸素は少なくなり、他の生物にも深刻な影響を与えるのです。
飛来するユスリカ
最近、富栄養化が進んでいる霞ヶ浦や諏訪湖、琵琶湖などの湖沼周辺では、多量のユスリカの成虫が夕方にかけて人家周辺に飛来しています。ユスリカの成虫は吸血はしませんが、窓や洗濯物に付着し地域の住民に被害を与えています。 また、成虫の死骸が飛散して気管支喘息や鼻炎などのアレルギー疾患の原因となることも知られています。ユスリカが群飛している場合は、ユスリカを吸い込まないように注意してください。
(左)穏やかな霞ヶ浦周辺 (中)夕方から飛来
(右)湖から飛来し窓に付着するユスリカの成虫
成虫は、明るい場所をめざします
成虫になると寿命は1週間程度です。
そのわずかな期間にオスは効率的に交尾の相手を見つけるため、蚊柱(スオーム)をつくって群飛し、メスを誘います。また、強い走光性があるため、人家の窓や街灯、自動販売機などに集まります。メスは交尾の後1~2日すると産卵し死んでしまいます。卵は種によって異なり、透明な糸状のものはアカムシユスリカ、塊状のものはオオユスリカの卵塊です。
ユスリカは世界に数千、日本でも800種以上にのぼる多くの種がいます。アカムシユスリカは霞ヶ浦、印旛沼、諏訪湖、精進湖、琵琶湖などで高密度で棲息しています。また、河川域には多くの種が生息していますが、まだ同定されていないものもたくさんいるようです。
湖底でタフに生きる幼虫
成虫になると寿命は1週間程度です。
富栄養化が進んだ湖や沼の底地では溶存酸素が少なくなっています。このような環境の中で、アカムシとして知られているユスリカの幼虫は湖底で静かに、しかし懸命に生きています。このような中で生きるためには、大量の酸素が必要になります。なぜそんなことができるのでしょうか?
その理由は、彼らが少ない酸素でも結合できる特殊なヘモグロビン(血液中で酸素を運搬する物質で鉄を含むものをいう)をもっているからです。幼虫の体部が赤いのはこのためです(貝では赤貝がヘモグロビンを持っています)。
しかし、夏ともなると湖底の水温が上がり、水中の溶存酸素がさらに不足します。そんな時でも湖底にいる幼虫は大丈夫なのでしょうか。なんと、そんな季節のアカムシ(ユスリカの幼虫)は深く潜って夏眠してしまい、この悪条件を上手に生き抜くのです。
益虫としての可能性
泥や粘液で巣管と呼ばれる繭(まゆ)のような衣をつくり湖底に沈む幼虫は、泥を食べ、有機物を消化・吸収し、残りを糞として排出しバクテリアが分解しやすくしています。このように幼虫は高い水質浄化能力を持っているのです。そして、水中にあるリンや窒素を体に蓄積します。その幼虫が成虫となって大量に飛び立つので、優れた有機物除去能力が発揮されるのです。このように人知れず水質浄化改善に一役買っているとは驚きです。
また、アカムシは釣りの餌として知られているように、魚にとっても大事な食物です。また、蛹が羽化のため浮上する晩秋は、ワカサギの成長が早いと言われています。このためワカサギ虫とも呼ばれているのです。
そして、ユスリカは汚れた水質からきれいな水質まで、多様な環境の水域で生息できるので、水質指標生物として広く利用されています。
成虫の死骸飛散による気管支喘息や鼻炎アレルギー疾患、住宅地への飛来になどにより不快害虫として知られているユスリカですが、幼虫の働きは益虫としての可能性を秘めています。単に「不快」であると一蹴してしまうには、水中での功績は多大なものがあるように思われます。
そして、ユスリカは汚れた水質からきれいな水質まで、多様な環境の水域で生息できるので、水質指標生物として広く利用されています。
横川吸虫/水辺のいきもの/ユスリカ/ワラジムシ/タマムシ/ハサミムシ
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