ハチなどに刺されると起こるアレルギー反応
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泣きっ面に蜂
悪いことがあった上に、さらに悪いことがおきるたとえ。また、不運が重なることのたとえ。辛い目にあって泣いているところに、さらに蜂が来て刺すということから。(ことわざ)
毎年のように、ハチに刺されて亡くなる方がいます。
フグ毒、ハブ毒、細菌のボツリヌス菌やトリカブトなどは死に至る極めて強力な毒を持っていますが、ハチに刺された場合、直接ハチ毒の薬理作用によって死ぬことはありません。しかし、ハチに何度か刺されるとI型アレルギー反応が関与した全身性アナフィラキシーショックが原因で、毎年およそ30~40名の人が死亡しています。このハチアレルギーで起こる全身性アナフィラキシ―は刺された人のすべてにおこるわけではなく、刺された人のおよそ10%と推定されています。
全身性アナフィラキシーショックを理解するキーワード
免疫:生体の防御機構の一つ。人間にとって有益だと免疫といい、有害だとアレルギー(過敏症)といいます。 アレルギーはある物質に2度目ないしそれ以後に接触した場合に生体(人間)の示す変化した反応能力(1度目の接触と異なった反応を示す)を意味します。
アレルゲン(抗原):アレルギー反応の原因となる物質をアレルゲンといいます。花粉、ほこり、ダニ、ある種の食物や薬品、ハチなどです。
抗体:人の身体をウィルスなどの感染症から守るためにつくられるタンパク質で、免疫グロブリン(Immunoglobulin)ともいいます。人では5種類認められており(IgA,IgD,IgE,IgG,IgM)、感染などの病気に対する体の防御機構の一部を担っています。アレルギー症状は主にIgE 抗体が過度に産生され、アレルゲンと反応した結果起こる症状です。主に喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎など。
肥満細胞:ヒスタミンやセロトニンなどの化学物質をおなか一杯に詰めてまるまると肥った細胞のこと。鼻の粘膜、目の粘膜、気管支の粘膜、皮下などの体のあらゆるところに存在します。IgE抗体は肥満細胞と結合しやすい性質があります。
全身性アナフィラキシーショックとは?
ハチに刺されると体内で「危険な物質が入ってきた!」と判断され、抗原(ハチ毒)に対する防御反応が起こり、IgEという抗体が産生されます。このIgE抗体は粘膜や皮下結合織にある肥満細胞と結合し、次にハチに刺された時に備えます。
再びハチ毒(抗原としてハチ毒キニン、ヒスタミン、セロトニン、マストパラン、ヒアルロニダーゼ、ホスホリパーゼ、ロイコトルエンなどが含まれています)が入ってくると、ハチ毒は産生されたIgE抗体と肥満細胞とに結合します。すると、肥満細胞が活性化され、ヒスタミン、ロイコトルエンなどの有害な化学伝達物質が体内に大量に放出(脱顆粒現象)され、体の各臓器に作用して様々な症状を引き起こします。
発痛物質(痛み、赤く腫れる、かゆみなどをおこす):
ヒスタミン、セロトニン、ハチ毒キニン、カテユラシン
溶血、組織破壊、白血球遊離作用物質:
マストパラン(肥満細胞の顆粒を放出させる)、ハチ毒キニン、ホスホリパーゼ
アレルギー反応起因物質:
ホスホリパーゼ、ヒアルウロニダーゼ
症状
(1)全身にじんましんがでる
(2)咽頭、声門の浮腫、気道収縮によって呼吸ができなくなる
(3)血圧が急に低下し、脳に血液がいきわたらず、低酸素状態となり意識がなくなるなどがあります。これらの症状は1時間以内に出るので、緊急処置をしないと死に至ります。小児期には軽症ですみますが18歳以上になると重症になるケースが多いようです。
応急処置と予防
これまでハチに刺されたことがあり、じんましん、くしゃみ、鼻づまり、胸のしめつけ、クラクラして倒れるなどの症状のあった人は
(1)医師に相談し、処方箋をもらうことで救急セット(主成分エピネフリン*=商品名アナキット)を用意することができます。
*このエピネフリン(0.3ccと0.5cc)の皮下への自己注射を練習しておく(約10分で意識障害などの症状がでるのでその時に備えて)。
(2)ハチ類の生態などの知識を身につけ、ハチには近づかない。
(3)ロイヤルゼリーなどの食品を食べる時には注意する。
(4)ハチ毒急速減感作療法について知っておく。
お問い合わせ
ヤマビル研究会 (代表:谷 重和)
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